特定外来生物に指定されるとどうなるか
特定外来生物に指定されるとどうなるか、についてまとめました。
直近ではガーが指定されています。
ざっくり言いますと、飼育・栽培・保管・運搬が原則禁止です。これをまとめて「飼養等」と言います。
飼育・栽培は分かりやすいですが、保管というのは、おそらく種などのことでしょう。運搬は捕まえた生物を持ち帰ることです。
輸入することが原則禁止です。多くの人は関係ないでしょう。
野外に放つ、植える、まく、ことが禁止されます。「放出等」と言います。捕まえてきたものを逃すことが相当します。ちなみにキャッチ&リリースのように捕まえたものをその場で逃す場合は「飼養等」「放出等」に該当しません。
許可を受けて飼養している者が、許可を持っていない者に対して譲渡することは禁止です。
許可を受けて飼養する場合は、「特定飼養等施設」のみでの飼育になります。
ガーの飼養等に関わる書類が現在環境省で公開されています。その書類のリンクと画像を示しておきます。これを見ておくと、イメージがしやすいでしょう。
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list/files/example_1A_lepisosteidae.pdf
こういう書類を書いて地方環境事務所に送ります。ガーの場合は今年の四月に始まり、六月三十日までに送る必要があります。送付でいいので、簡単にできると思います。
ミステリークレイフィッシュ
読売新聞の記事に出ていました。
これ、いつまで残っているかわかりませんが、概要を示すと、メスだけで増殖するザリガニが世界各地に分布を広げ、日本でも特定外来生物に指定する方針というニュースです。
そもそも私はこのミステリークレイフィッシュに関しては不気味なものしか感じていませんでした。何しろメスだけで増えていくのですから、一匹放流しただけで増え放題です。しかもきわめてデリケートな種類ならばともかく、簡単な器具で飼育できるとなれば、侵略的外来生物となるのは火を見るよりも明らかです。こんなものがホームセンターなどで簡単に入手できる方がおかしいのです。
このヤバさは『ナショナルジオグラフィック』誌の以下の記事を参照ください。
見かけはアメリカザリガニと比較的容易に見分けがつきます。なので間違って持って帰ってしまう、ということはないでしょう。
というのは、ザリガニオタクだけです。ザリガニにさほど興味のない人にとって、成長した大きなオスのザリガニ以外はどれも同じに見えるはずです。
私の同僚の理科の先生もアメリカザリガニのメスとニホンザリガニの違いを理解していませんでした。私からすればライオンとトラ程度には、あるいはEF81とEF80程度には違うのですが、多数派からすれば知ったことではありません。
姿に関しては以下のサイトが極めて参考になります。大理石様の模様が特徴です。目に焼き付けてください。で、こういう模様を持ったザリガニは持って変える(運搬)が禁止されるのも間近です。今から警戒しておくことに越したことはありません。
このサイトも参考になります。目を通しておいて損はありません。
特定外来生物に指定された場合の話も次回しておきたいと思います。
トラブル−ガラスにコケが生える
水槽にコケがつくことがあります。
ちなみに厳密にはコケではありません。ただアクアリウムの世界では「コケ」と言います。正しくは藻類と言います。
原因と対処法は色によって異なります。
例えば新学期になって飼い始めたとします。ろ過が立ち上がったころに出てくるのが茶色のコケです。拭くとすぐに取れます。これは珪藻といいます。褐藻類の一種です。
これは水中の硝酸塩を養分にして真っ先に繁殖します。うっすらと茶色のコケが出て来たらろ過が立ち上がった、というサインとしても用いられるほどです。これが全く出てこない場合は、何らかのトラブルが考えられる、と言われるほどです。
この対処法は、こまめに拭く。それ以外にありません。正常な水槽には出ます。もっとも水草が繁茂している水槽では出ません。硝酸塩を水草が吸収するため、珪藻に栄養分が回らないからです。
緑色の藻ががっつり着くケースがあります。比較的日光が強いところに見られます。硬くくっつくとこそげ落とすのに手間がかかりますので、そうなる前にこまめに水槽の内側を掃除してください。
ちなみに水槽の内部を拭くときに使う器具ですが、メラミンスポンジを使うのが一番早いです。百円ショップやスーパーで掃除用のものを適宜買って、ちぎって使います。百円のもので数ヶ月は保ちます。
ただこれが有効なのはガラス製の水槽です。プラケースでは傷がつきます。清潔なガーゼで拭くのが一番費用がかからないでしょう。布を巻きつけた棒がアクアリウム製品で売っていますが、アクアリウム用品はぼったくり的に高いです。私は愛用してますが。
例えばこういうものです。
ただプラケは安いので、どうしようもなくなったら買い換えるのが正解かもしれません。
トラブル−水が濁る
魚を飼い始めて数週間、魚が次々に死ぬトラブルから解放される、もしくは魚が死ななかった、として、次に悩まされるのが水の濁りです。
うまくろ過が機能している水槽は、ガラスにいろいろ付着したりしますが、水自体は透明です。水の透明度がすっきりしない場合は、何か問題があります。
大別しますと緑に濁るか、白く濁るか、です。
緑に濁るのは植物性プランクトンの繁殖です。薄く濁っている程度ならばそれほど問題にはなりません。金魚の飼育の場合はむしろ推奨されます。グリーンウォーターと言って、金魚にとっては理想的です。
ただあまり強く濁りすぎて魚がよく見えない、というくらいになりますと本末転倒ですし、昼間は光合成してくれるので酸素の補給になりますが、夜になると彼らも酸素を消費しますので、場合によっては酸素不足という事態を引き起こします。
緑に濁るのは、明るすぎるからです。置き場所を考え直す必要があります。直射日光が当たっている場合は、夏に水温が上がりすぎて魚が死ぬこともあります。メダカのように強い場合でも35度は暑すぎます。そのリスクを背負うことになるので、直射日光が長時間当たる場合は置き場所を変えましょう。それだけで減って行きます。
注意点として水槽を動かす場合は必ず水槽から水を抜いて動かすようにしてください。水槽に水が入ったまま動かすと水漏れの原因となります。プラケースの場合は水漏れは起こりませんが、水は意外と重たいので事故の原因ともなります。水をできるだけ少なくしましょう。普通の水槽は完全に水を抜いた方がいいです。魚もプラケやバケツに移して移動させます。
水が白く濁る場合は、バクテリアにトラブルが発生している印です。うまく行っている水槽ではニトロバクター属とニトロソモナス属のバクテリア、いわゆる硝化バクテリアが支配的な相を占めていますが、そこのバランスが崩れてそれ以外のバクテリアが増え、生存競争が起こると、生存競争に敗れたバクテリアの死骸が漂って白く濁る原因となります。
白い濁りはろ過がうまく行っていないサインなので、対処法としては水換えを頻繁に行うことです。少しずつ毎日水換えを行うと、しばらくすれば硝化バクテリアが増えて水の濁りがなくなるはずです。
あと濁りが発生している場合は、富栄養状態になっていることが多いので、餌を控える、という対処も必要です。餌は最小限が原則です。特に保育園や幼稚園の園児は餌をあげたがる傾向が強いように思いますので、その点気をつけてください。
トラブル−次々に魚が死ぬ
新学期に飼い始めたメダカなどが次々に死んでいく、ということはありませんか。
飼育を始めて間がないときに次々に死んでいくのには理由があります。それは水槽が立ち上がっていないからです。
具体的に言うと、アンモニア→亜硝酸→硝酸というサイクルが出来上がっていないからです。魚はその老廃物をアンモニアという形でエラから排出します。アンモニアは揮発性が高く、エアーをかけていたりすればやがて消えますが、猛毒のため、かなりのダメージを与えます。
残ったアンモニアは亜硝酸バクテリアによって速やかに亜硝酸に変わりますが、この亜硝酸もかなりの毒性を持つので、ダメージを受けます。概ね次々に死ぬのはこの段階で水槽立ち上げが止まってしまうからです。
ここで焦って魚を追加すると、まだ水槽が立ち上がっていないので、追加した分だけ死んでいきます。追加した分で済めばいいのですが、多くの場合、他の魚も巻き添えにします。
とりあえず水換えをマメにすること、それしかありません。具体的にはコップ数杯分を排水して、その分の水を足す、の繰り返しです。最低限一日に一回、できれば一日に数回やれれば、よりいいです。それをしばらく続けると、どこかで死ぬのが止まります。だいたい二週間もすれば落ち着きます。魚を増やしたければ、落ち着いてから少しずつ足していきましょう。ここで短気になってどかっと増やすとまた同じことの繰り返しです。水槽に繁殖しているバクテリアの許容量以上の魚は生存できません。
なおここで魚が次々と死ぬことを前提にしていますが、実は避けることができます。最初っから魚をたくさん入れない、とか、水槽の立ち上げの基本を守る、とかでかなり防げます。この点については過去の記事を読んでください。ここではいきなり知り合いなどから魚を贈られて、あわてて水槽を立ち上げた、という前提で話をしています。それは私自身体験したことがあるからです。
次回は水が濁る、という事象についての対応法と原因を述べたいと思います。
メダカ飼育の教育的意義を考える
ここでメダカとしたのは、一番飼育するのに都合がいいからです。入手しやすい、飼いやすい、設備いらない、うまくすれば繁殖も見られる、特に保護しなければ爆発的に増えて殺処分しなければならないこともない、といいことづくめです。
実は中学受験でもあまりメダカの飼育については突っ込んだ問題は出ません。基本的に飼育する器具の設問と、卵やヒレの位置を書かせる、という問題が主となります。器具関係では水草とメダカの関係を聞く、とかそういう感じになるかと思います。ある高偏差値中学校ではメダカの背ビレと卵について質問したものがありました。これには感心しました。つまりメダカがダツ目であることを示す特徴を聞いてきたからです。
でもそうしたことを園児に聞いても「???」となるだけでしょう。園児には何を教えるべきなのか。こういうことは保育士や幼稚園教諭の方が専門家なので私が喋々することでもないのですが、素人なりの見解を示せば、人間との違いを実感することに意義があるのではないか、と考えています。
大学で一般教養科目(最近ではリベラルアーツとかっこつけて呼びます)の歴史学を講義する場合、学生に身につけてほしいと思っているのは、他者を知ることで自分を相対化する、という視点です。自分とは違う世界に生きている、生きていた人々を知ることで、今自分が生きている価値観が絶対のものではないことを知る、というのは非常に大きなことです。
メダカを飼育する体験を通じて生きている、という共通点を見出し、命の大切さを知る、ということも重要ですが、もう一つ、メダカと人間の違いを知ることで、メダカのために何をしてあげられるのか、ということを知ることができます。これを幼少のうちに身につける、というのは非常に貴重な体験と言えるのではないでしょうか。
メダカと我々の違いの最大のポイントは、彼らが水中生活をする変温動物である、ということです。まず水中は比熱が大きく、熱しにくく冷めにくいという側面を持っています。それと関連して変温動物である、ということも重要です。変温動物は自分で体温を調節できないので、管理者が体温を管理してやることが必要になります。園児にはその管理は無理であっても、保育者がそのことを伝えながら世話をすれば、園児にも伝わるかもしれません。
もう一つは、水槽というのが限られた容量しかなく、排泄物や食べ残しもそこに蓄積する、ということが挙げられます。空気も管理者が気を使う必要がありますし、排泄物や食べ残しなども管理者が掃除しないと、自然にはなくなりません。それを伝えながら、毎日のコップ一杯の水換えをしてあげるのもいい体験になるのではないでしょうか。
生物学的な知識と生命の尊厳という道徳的な知識というのは、相対立するものではなく、相互に関連しあうものであると思います。
変温動物と水中生活をする動物、という面ではザリガニなどもその範疇に入るでしょう。メダカの場合はそれに加えて絶滅危惧種、ザリガニの場合は侵略的外来生物ワースト100という側面からの説明を行うのはまだ早いかな、と思いますが、男の子の中にはめちゃくちゃ詳しいのもいます。そういう子ども向けにはこういう説明も入れてあげるといいかも、です。
「動物飼育における保育者の認識に関する研究」を読む
教育の現場で動物飼育をするときの課題などを考察した論文を読んで考えたいと思います。
伊藤哲章・小林みゆき「動物飼育における保育者の認識に関する研究」(『日本科学教育学会研究報告』Vol.30 No.6,2016)を読んでみたいと思います。
要旨によれば、「動物飼育における保育者の認識」をさぐり、そこに「生物教育上の利点よりも「飼育・入手のしやすさ」が優先される傾向があること、さらに虫を積極的に飼育している保育者は生物教育上の利点を重視していることも合わせて指摘されています。
結論としてあげられているのは、保育者がしばしば「道徳的な姿勢を養うこと」「飼育すること自体」を目的としており、「子どもが動物の飼育を通して自然科学を学ぶという視点が弱い」ことを挙げています。そして「思考力の芽生えを養う」という学校教育法の目的に応えていないことを指摘します。最後に課題として「保育者には道徳的な姿勢を養いつつも、自然科学的な学びの視点を持ち合わせた保育が必要」「思考力の芽生えの機会を見逃さず、それを育てるという姿勢が保育者に求められる」としています。
門外漢なりの考察を行います。
虫を積極的に飼育する保育者が。生物教育上の利点を重視する傾向について、本論文中で指摘されている通り、変態することが挙げられるでしょう。そういう意味ではオタマジャクシもそれに類するかと思います。逆にウサギやメダカなどは自然科学的な学びの材料として使うには、対象に対する知識や観察が要求され、なかなか難しいものがあるかもしれません。というか、私はこれまで飼育してきてそのようなことを考えたことはありません。
ザリガニについていえば、脱皮した直後を見たことはあります。娘の保育園での出来事ですが、これはある意味自然科学的な学びにつながったと思います。しかしザリガニの脱皮を目撃できる、というのは運次第ですし、メダカの産卵から孵化、成長を見ることは道徳的な姿勢を養うとともに自然科学を学ぶことにもつながります。しかしかなり意識しないと気づかないうちに孵化し、気づかないうちに食べられてしまう、というのが現実です。なかなか難しいですね。
本論文で「飼育に向く動物」として挙げられている動物について私見を述べます。
挙げられていたのは、カブトムシ、ザリガニ、カタツムリ、オタマジャクシ、キンギョ、ウサギ、メダカ、カメとなります。
あくまでも私見ですが、オタマジャクシはあまり推奨しません。オタマジャクシ自体は飼いやすく、変態過程を見せるのは、子どもたちの自然科学的な学びに大きく寄与します。問題は成体となったカエルの飼育がほぼ不可能であるということです。両生類の成体はほぼ飼育は無理だと考えて間違いはありません。アカハライモリとツメガエルとツノガエルとウーパールーパー位です。ウーパールーパーは厳密にいえば成体ではなくネオテニー(幼体成熟)なので、飼育できるわけで、何かの表紙に成体に変態してメキシコサラマンダーになると飼育は無理です。多分ほどなく死にます。日本産のカエルは飼育は無理だと思って下さい。
ウサギは他のものと少し性質が違うと思います。ウサギは哺乳類で、恒温動物は変温動物に比べると飼育が格段に難しく、保育園の担任の一存で飼育するのは無理なレベルで、園全体での飼育になるでしょう。そうなると犬や猫を飼うのとほぼレベルは変わらないでしょう。
カタツムリはかなりの確率で飼育されます。娘の保育園でも三年間お世話になった先生方は必ず飼育していらっしゃいました。手軽に扱えること、飼育自体も手間が全くかからないこと、園児の人気も高いことなど、いいことづくめなのでしょうが、個人的には軟体動物腹足類は受け付けません(汗)。
ザリガニは以前にも取り上げたことがありますが、放流などの問題があります。侵略的外来生物種ワースト100に選定されている生き物ですから、取り扱いは慎重に、というところです。
キンギョは実は近縁種のコイが世界の侵略的外来種ワースト100に指定されています。大きく育ち、意外と取り回しの厄介な魚です。個人的にはあまりおすすめしません。
この論文の提言を受けて、それぞれの動物の自然科学的な学びのポイントについて考えたいと思います。