保育・教育の現場での生き物飼育方法講座

京都生き物文化研究所ブログ−保育園・幼稚園など幼児教育の現場での生き物飼育に役立つ情報を提供します。

「動物飼育における保育者の認識に関する研究」を読む

教育の現場で動物飼育をするときの課題などを考察した論文を読んで考えたいと思います。

 

伊藤哲章・小林みゆき「動物飼育における保育者の認識に関する研究」(『日本科学教育学会研究報告』Vol.30 No.6,2016)を読んでみたいと思います。

 

要旨によれば、「動物飼育における保育者の認識」をさぐり、そこに「生物教育上の利点よりも「飼育・入手のしやすさ」が優先される傾向があること、さらに虫を積極的に飼育している保育者は生物教育上の利点を重視していることも合わせて指摘されています。

 

結論としてあげられているのは、保育者がしばしば「道徳的な姿勢を養うこと」「飼育すること自体」を目的としており、「子どもが動物の飼育を通して自然科学を学ぶという視点が弱い」ことを挙げています。そして「思考力の芽生えを養う」という学校教育法の目的に応えていないことを指摘します。最後に課題として「保育者には道徳的な姿勢を養いつつも、自然科学的な学びの視点を持ち合わせた保育が必要」「思考力の芽生えの機会を見逃さず、それを育てるという姿勢が保育者に求められる」としています。

 

門外漢なりの考察を行います。

 

虫を積極的に飼育する保育者が。生物教育上の利点を重視する傾向について、本論文中で指摘されている通り、変態することが挙げられるでしょう。そういう意味ではオタマジャクシもそれに類するかと思います。逆にウサギやメダカなどは自然科学的な学びの材料として使うには、対象に対する知識や観察が要求され、なかなか難しいものがあるかもしれません。というか、私はこれまで飼育してきてそのようなことを考えたことはありません。

 

ザリガニについていえば、脱皮した直後を見たことはあります。娘の保育園での出来事ですが、これはある意味自然科学的な学びにつながったと思います。しかしザリガニの脱皮を目撃できる、というのは運次第ですし、メダカの産卵から孵化、成長を見ることは道徳的な姿勢を養うとともに自然科学を学ぶことにもつながります。しかしかなり意識しないと気づかないうちに孵化し、気づかないうちに食べられてしまう、というのが現実です。なかなか難しいですね。

 

本論文で「飼育に向く動物」として挙げられている動物について私見を述べます。

 

挙げられていたのは、カブトムシ、ザリガニ、カタツムリ、オタマジャクシ、キンギョ、ウサギ、メダカ、カメとなります。

 

あくまでも私見ですが、オタマジャクシはあまり推奨しません。オタマジャクシ自体は飼いやすく、変態過程を見せるのは、子どもたちの自然科学的な学びに大きく寄与します。問題は成体となったカエルの飼育がほぼ不可能であるということです。両生類の成体はほぼ飼育は無理だと考えて間違いはありません。アカハライモリとツメガエルとツノガエルとウーパールーパー位です。ウーパールーパーは厳密にいえば成体ではなくネオテニー(幼体成熟)なので、飼育できるわけで、何かの表紙に成体に変態してメキシコサラマンダーになると飼育は無理です。多分ほどなく死にます。日本産のカエルは飼育は無理だと思って下さい。

 

ウサギは他のものと少し性質が違うと思います。ウサギは哺乳類で、恒温動物は変温動物に比べると飼育が格段に難しく、保育園の担任の一存で飼育するのは無理なレベルで、園全体での飼育になるでしょう。そうなると犬や猫を飼うのとほぼレベルは変わらないでしょう。

 

カタツムリはかなりの確率で飼育されます。娘の保育園でも三年間お世話になった先生方は必ず飼育していらっしゃいました。手軽に扱えること、飼育自体も手間が全くかからないこと、園児の人気も高いことなど、いいことづくめなのでしょうが、個人的には軟体動物腹足類は受け付けません(汗)。

 

ザリガニは以前にも取り上げたことがありますが、放流などの問題があります。侵略的外来生物種ワースト100に選定されている生き物ですから、取り扱いは慎重に、というところです。

 

キンギョは実は近縁種のコイが世界の侵略的外来種ワースト100に指定されています。大きく育ち、意外と取り回しの厄介な魚です。個人的にはあまりおすすめしません。

 

この論文の提言を受けて、それぞれの動物の自然科学的な学びのポイントについて考えたいと思います。